【警戒】インドで感染確認の「ニパウイルス」流行の懸念

 インドで致死率が高いとされる「ニパウイルス」の感染が確認され、アジア各国で警戒感が高まっている。日本ではほとんど知られていない感染症だが、どのようなウイルスなのだろうか。

ニパウイルスの特徴と過去の流行

 ニパウイルスは1998〜1999年にマレーシアで初めて確認されたウイルスで、その後はバングラデシュやインドなど南アジア・東南アジアを中心に散発的な流行が続いている。
 インドでは2025年12月以降、東部地域で2人の感染が報告され、1人が回復、1人が重篤な状態とされている。
 保健当局が濃厚接触者196人を検査した結果、全員が陰性だったと発表しており、現時点では大規模な感染拡大には至っていない。

 報道では致死率が40〜75%と伝えられることが多いが、埼玉医科大学総合医療センターの岡秀昭教授は、「この数字は主に脳炎を発症した重症患者に限定した致死率と考えられる」と指摘する。 不顕性感染(症状が出ない感染者)も一定数存在するとみられており、実際の致死率は報道される数値より低い可能性もあるという。

感染経路と症状

 ニパウイルスの主な宿主は、熱帯地域に生息する果実食のコウモリとされている。コウモリに汚染された果物や、それを介して感染した家畜を通じて人に感染するケースが多い。
 人から人への感染も報告されているが、血液や体液への接触など、いわゆる「濃厚接触」が必要で、空気感染のように容易に広がる感染症ではないと考えられている。

 潜伏期間はおおむね4〜14日。発症すると発熱、頭痛、筋肉痛、嘔吐など、インフルエンザや新型コロナウイルスとも似た症状が現れる。
 その後、重症化すると意識障害やけいれんなどの神経症状が現れ、急性脳炎に進行することもある。

日本で流行する可能性はあるのか

現時点で日本国内での患者報告はなく、その大きな理由として、ニパウイルスを媒介するコウモリが日本にはほとんど生息していない点が挙げられる。ただし、海外渡航者が帰国後に発症する可能性は否定できず、水際対策や医療機関での注意が必要になると専門家は指摘している。

もっとも、感染経路の中心が「食物や動物由来」であるため、新型コロナウイルスのように大規模なヒト−ヒト感染が起こる可能性は高くないとみられている。

予防法と今後の課題

 現在、ニパウイルスに対するワクチンや特効薬は確立されておらず、治療は対症療法が中心となる。一部では抗ウイルス薬「アビガン」などが有効である可能性も指摘されているが、十分な臨床データはまだ整っていない。

流行地域に渡航する場合は、
コウモリが触れた可能性のある生の果物を避ける
・家畜や野生動物に不用意に触れない
・手洗いやマスクを徹底する

といった基本的な感染対策が重要とされる。

専門家は「過度に恐れる必要はないが、正しい知識を持つことが大切だ」と指摘する。今後、研究が進めばワクチン開発も現実味を帯びてくる可能性があり、引き続き国際的な監視と情報共有が求められている。

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